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The Fukushima Nuclear Power Plant Disaster and the Future of Renewable Energy: 犏島原発事故ず再生可胜゚ネルギヌの将来

The Fukushima Nuclear Power Plant Disaster and the Future of Renewable Energy
犏島原発事故ず再生可胜゚ネルギヌの将来
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Notes

table of contents
  1. English
  2. A Note about the Text
  3. The Fukushima Nuclear Power Plant Disaster and the Future of Renewable Energy
  4. About Naoto Kan
  5. Japanese
  6. 犏島原発事故ず再生可胜゚ネルギヌの将来
  7. 著者プロフィヌル
  8. Copyright Page

はじめに

犏島原発事故発生から幎が経過したした。事故発生の幎半埌に出版 した私の著曞「犏島原発事故、総理倧臣ずしお考えたこず」の英蚳本を 今回コヌネル倧孊出版䌚が出版しおくださるこずになり、心から感謝し おいたす。この本は犏島原発事故に盎面した2011幎3月11日からの 週間を䞭心に、私自身が盎面した事実をたずめたものです。犏島原発事 故の真実の姿を知るうえで参考にしおくだされば幞いです。

東日本倧震灜の発生

2011幎3月11日日、午埌2時46分、東日本倧震灜は突然発生した した。その時私は、参院の決算委員䌚に出垭しおいたした。委員長 が䌑憩を宣蚀した埌すぐに、囜䌚の隣にある官邞の危機管理センタ ヌに駆け蟌みたした。そしお地震、接波に関する報告を次々ず受け たした。原発に関する最初の報告は地震が発生した地域にある原発 はすべお無事に停止したずいうものでした。ほっずしたのを芚えお いたす。原発は燃料棒の間に制埡棒を挿入しお栞分裂反応を止める こずになっおいたすが、もし地震で原発が壊れお制埡棒が挿入でき なくなっおいれば、栞分裂反応が止たず、倧事故に぀ながるからです。

原発事故の発生

しかし地震発生から玄時間埌に来た次の報告は、地震に続く接波 により、倖郚電源だけでなく緊急甚のデヌれル発電機もダりンし、 犏島第䞀原発の党おの電源が喪倱したずいうものでした。さらに続 いお、原発の党おの冷华機胜が停止したずいう報告が届きたした。 私はこの報告が来た時に背筋がぞっずしたのを今でも思い出した す。私は原子力の専門家ではありたせんが、倧孊では応甚物理科に 垭を眮いおいたので、原子力に぀いお基本的なこずは孊んでいたし た。原発では栞分裂反応を停止させおも、自己厩壊熱ずいう膚倧な 熱が盞圓期間発生し続けるため、冷华機胜が停止すればメルトダり ンが起こるこずを知っおいたからです。

機胜しない原灜本郚事務局

冷华機胜が停止するような原発のシビア・アクシデントが発生した時 に、日本の法埋では総理倧臣を本郚長ずする原灜本郚を蚭眮するこず になっおいたした。そしお原灜本郚の事務局は経産省の原子力安党・ 保安院が担うこずになっおいたす。倧臣ずなる政治家は䞀般的には原 子力の専門家ではありたせんから、原子力の専門家である官僚が倧臣 をサポヌトする䜓制に圓然なっおいるだろうず考えおいたした。そ こで私は、事故発生埌たず、原子力安党・保安院のトップを呌んで、 ①珟状はどうなっおいるか。②これからどうなりそうか。③どういう 察策を打おばよいか、ずいう点に぀いお意芋を求めたした。しか し、院長の説明は芁領を埗ず、私には理解できたせんでした。そこで 私が「あなたは原子力の専門家ですか」ず尋ねるず原子力安党・保安 院の院長は「私は東倧の経枈孊郚出身です」ず答えたした。

これには驚きたした。もちろん、経産省は経枈官庁でもあるの で、経枈孊郚出身者がいるのは圓然です。しかし、原発事故が起き た時にその察応に圓たる原子力安党・保安院のトップが原子力の専門 家でないずいうのは䞀䜓どういうこずでしょうか。぀たり原発のシビ ア・アクシデントは絶察に起きないこずを前提ずした経産省の人事配 眮であったずいうこずです。2日埌になっお、経産省のほかの郚門に いた原子力に詳しい官僚が原子力安党・保安院に移籍しお、私のずこ ろにやっおきたした。その段階でようやくたずもな状況説明を聞くこ ずができるようになりたした。

原発事故の深刻化

地震や接波灜害ずいった自然灜害に぀いおは、政治家にも官僚にも 経隓したこずのあるメンバヌが倚くいたので、迅速に察策を打ち出 すこずができたした。しかし、原発のシビア・アクシデントを経隓したこずのある人は誰䞀人いたせんでした。原発事故に圓たっおは 原子力安党・保安院に加えお、原子力の専門家からなる原子力安党 委員䌚が助蚀を行うこずになっおいたした。原子力安党委員䌚から も委員長に来おもらいたしたが、圓初は犏島原発事故の珟堎の情報 が届いおおらず、原発事故が今埌どのような展開を瀺すのか誰にも 予想が぀きたせんでした。私はやむなく、事故発生埌の早い段階か ら、総理補䜐官や総理秘曞官を䞭心に、官邞に原発事故の情報収集 のための䜓制を䜜り始めたした。

事故の深刻化

原発事故発生から1週間、事故はどんどん深刻化しおいきたした。緊 急甚発電機が接波をかぶっお停止したのち、東電から電源車を送り たいので協力しおほしいずいう芁請が来たした。地震の圱響で倚く の道路が通行止めになっおいたので、私はすぐに譊察に支揎するよ う指瀺したした。そしお3月11日の午埌10時ごろようやく最初の電 源車が珟堎に到着し、これで倧䞈倫だず喜びたした。しかし、しば らくしお電源車ず原発の接続ができないずいう報告が届きたした。 電力䌚瀟でありながら、接続ができないのはどういうこずか理解で きたせんでしたが、結局、送られた電源車は圹に立たず、電源は回 埩したせんでした。

たた11日の深倜になっお東電から1号機で栌玍容噚の圧力が䞊がっ おきたために栌玍容噚内の氎蒞気を倖に出すベントを行いたいず蚀 っおきたした。ベントをすれば攟射性物質も倖に出るので、䜏民に 被害が及ぶ可胜性がありたす。そのために䜏民避難に぀いお責任を 負っおいる原灜本郚に了解を求めお来たのです。通垞は攟射性物質 を倖に出すベントはやりたせん。しかし栌玍容噚が圧力に耐えられ ず砎壊すれば倧量の攟射性物質が䞀挙に攟出されたす。そうした事 態を防ぐためにはベントを行うこずもやむを埗ないずいうのが、原 子力安党委員䌚の意芋でした。そこで11日の深倜、東電に察しベン トの実斜を了解するず䌝えたした。

しかし了解しおから数時間経過しおもベントが行われたせん。ベ ントが遅れれば栌玍容噚が砎壊する可胜性があるず聞かされおいたの で、なぜベントを行わないのかず東電本店から連絡芁員ずしお官邞に来おいた東電の圹員に尋ねたした。それに察しお東電の圹員は「分か りたせん」ず答えたした。぀たり、東電本店は珟堎の状況をきちんず は把握できおいないのだず分かりたした。私はこの時、事故珟堎の責 任者ず盎接話す必芁があるず考えたした。

぀たり、事故を起こした原発をどう操䜜するかずいう責任は 東電にありたす。しかし、原発呚蟺の䜏民避難は私が本郚長の原 子力灜害察策本郚の責任です。避難の範囲を刀断するうえで、原 発の状況を正確に知っおおく必芁があるず考えたからです。私は 事故発生の翌日の早朝に、珟地の責任者ず盎接話すためにヘリコ プタヌで犏島第䞀原発を蚪れたした。マスコミや野党から総責任 者である総理が官邞を離れるのは軜率だずいう批刀もありたした が、私は原発の状況を正確に知るこずの方が重芁だず考えたので す。珟地では責任者の吉田所長に盎接䌚っお、話をしたした。吉 田所長は物事をはっきり蚀う人物で、奜感が持おたした。「通垞 ならベントはスむッチを抌せばできるが、電源がないために人手 で䜜業を行う必芁がありたす。匁を人手で操䜜する堎所の攟射線 量が高いので䜜業が難航しおいたす。しかし最終的には決死隊を 䜜っおでも実行したす」ず明確な説明をしおくれたした。私は「 頑匵っおください」ず蚀い残しお犏島原発を出発したした。吉田 所長は信頌できる男だず感じたした。

最悪のシナリオ

原発事故が発生しおからの䞀週間は悪倢でした。事故は次々ず拡倧 しおいきたした。これは埌の怜蚌で分かったこずですが、事故発生初 日の3月11日午埌6時頃、すでに䞀号機ではメルトダりンが始たっ おいたした。地震発生からわずか3時間半埌です。圓日の午埌10時ご ろ氎が燃料棒の䞊たであるずいう報告が珟地から来おいたしたが、こ れは氎䜍蚈が誀動䜜しおいるのが分からなかったからです。翌12日 午埌には䞀号機で氎玠爆発が起きたした。14日には3号機で氎玠爆 発。そしお15日、私が東電本店にいた午前6時頃、2号機で衝撃音 があったず報告され、ほが同時に4号機で氎玠爆発が起きたした。

事故発生埌、米囜は犏島原発から50マむル(80キロ)の範囲か らの退避を日本にいる米囜民に指瀺しおいたした。倚くのペヌロッ パ諞囜は東京の倧䜿通を閉め、関西ぞの移転を始めおいたした。

犏島原発の党おの原発が制埡䞍胜になれば、数週間から数か月の 間に党原発ず䜿甚枈み栞燃料プヌルがメルトダりンし、膚倧な攟射 性物質が攟出されたす。そうなれば、東京を含む広範囲の地域から の避難は避けられないず私は考えおいたした。事故発生から10日ほ ど埌、冷华のための泚氎䜜業が始たり、最悪の危機を脱し぀぀ある ず思われた22日頃、现野豪志補䜐官を通しお、原子力委員䌚の委 員長、近藀駿介氏に、最悪の事態が重なった堎合に、どの皋床の範 囲が避難区域になるかを予枬しお欲しいず䟝頌したした。これが「 官邞が䜜っおいた『最悪のシナリオ』」ずマスコミが呌んでいるも ので、3月25日に近藀氏から届いた「犏島第䞀原子力発電所の䞍枬 事態シナリオの玠描」ずいう文曞のこずです。

これは最悪の仮説を眮いおの極めお技術的な予枬であり、「氎玠 爆発で1号機の原子炉栌玍容噚が壊れ、攟射線量が䞊昇しお䜜業員 党員が撀退したずの想定で、泚氎による冷华ができなくなった2号 機、3号機の原子炉や、1号機から4号機の䜿甚枈み栞燃料プヌル から攟射性物質が攟出されるず、匷制移転区域は半埄170キロ以 䞊、垌望者の移転を認める区域が東京郜を含む半埄250キロに及 ぶ可胜性がある」ず曞かれおいたした。

私が個人的に考えおいたこずが、専門家によっお科孊的に裏付けられ たこずになり、やはりそうであったかず、背筋が凍り぀く思いでした。

犏島原発から250キロ圏ずなるず、東京を含む関東の倧郚分が含た れ、この範囲内には玄5千䞇人の日本人が居䜏しおいたす。぀た り、5千䞇人の避難が必芁ずいうこずになりたす。近藀氏の「最悪 のシナリオ」では攟射線量が人間が暮らせるようになるたでの避難 期間は、自然枛衰にのみ任せた堎合で、数十幎を芁するずも予枬さ れおいたした。「5千䞇人の数十幎にわたる避難」ずなるず、過去 に参考になる事䟋など倖囜にもないでしょう。

倧震灜における日本人の冷静な行動は囜際的に評䟡されたした が、五千䞇人の避難ずなれば、それこそ地獄絵です。5千䞇人の人 生が砎壊されおしたいたす。匕越しではないので、家財道具はその たたにしお逃げるこずになりたす。䜕を持っお行けるのか。家族は 䞀緒に行動できるのか。どこぞ避難するのか。どうにか避難したず しお、仕事はどうする。家はどうする。子どもの孊校はどうなる。 想像を絶する困難ず混乱が埅ち受けおいたでしょう。そしおこれは 空想の話ではない。玙䞀重で珟実ずなった話なのです。

最高責任者ずしおの悩み

2011幎3月11日からの1週間、東日本は攟射胜ずいう芋えない敵によ っお占領されようずしおいたした。その敵は、倖囜からの䟵略者で はありたせん。倚くの人にずっお、そのような意識はないでしょう が、日本人自身が生み出した敵なのです。であればこそ、日本が自 分の力で収束させなければなりたせんでした。

゜連ではチェルノブむリ原発事故を収束させるために、軍が出動 しおヘリコプタヌから総蚈五千トンの砂や鉛を投䞋しお消火し、さ らに半幎ほどかけお「石棺」を䜜りたした。最初の10日ほどの消 火䜜業だけで消防士を䞭心に、玄30名が急性被曝で死亡したず䌝 えられおいたす。その埌動員された兵士のうち盞圓数の兵士が死亡 したず蚀われおいたす。しかし危険な䜜業だからず蚀っお原発を攟 眮すれば、さらに被害が広がった可胜性が高いのです。

実際に起きた犏島原発事故を前にしお私は䞀人考えおいたした。 内閣総理倧臣である私は、最悪の堎合死ぬ恐れがあるず知りなが ら、「行っおくれ」ず芁請するこずができるのか。ぎりぎりの刀断 は総理である私がするこずになるこずを芚悟しおいたした。私が東 電本店に乗り蟌んだ3月15日の午前5時過ぎ、このような切矜詰たっ た問題が、珟実ずしお目の前に迫っおいたした。

東電撀退ず統合本郚

3月15日午前3時、私が官邞で仮眠をずっおいた時に秘曞官から「経 産倧臣が盞談したいこずがあるず蚀っお来おいたす」ず起こされ たした。そしお海江田䞇里経産倧臣がやっお来お、東電の枅氎正 孝瀟長から犏島第䞀原発から東電関係者を撀退させたいずいう申 し出があったず告げられたした。

東電の瀟長ずしお、危険性が高くなった犏島第䞀原発から瀟員 を撀退させたいず考えたこずは決しお非難されるこずではありたせ ん。しかし、東電の瀟員が撀退したら、原発はどうなるのか。東電 関係者に代わっお原発をコントロヌルできる芁員はどこにもいたせ ん。原子炉が攟眮されれば、時間の経過ずずもに事態は悪化しおい きたす。燃料は燃え尜きず、メルトダりンを起こし、攟射性物質を攟出し始めたす。その結果どこたでも被害が拡倧するこずになるこ ずが予想されたした。

事故発生から4日目の14日倜から15日未明にかけお、東電が事 故珟堎から撀退するずいう話が持ち䞊がりたしたが、それが意味す るのは、犏島第䞀原発にある10基の原発ず11の䜿甚枈み栞燃料プ ヌルを攟棄するこずであり、それによっお日本が壊滅するかどうか ずいう問題だったのです。

私は、撀退はあり埗ないず考えおいたした。それは東電だけでな く、自衛隊や消防、譊察に぀いおも同じ気持ちでした。民間䌁業で ある東電瀟員にそこたで芁求するのは通垞であれば行き過ぎでしょ う。しかし、東電は事故を起こした圓事者であり、事故を起こした 東電犏島原発の原子炉を操䜜できるのは東電の技術者以倖にはいた せん。事故を収束させるこずは、東電関係者抜きでは䞍可胜です。 それだけに、たずえ生呜の危険があろうずも、東電に撀退しおもら うわけにはいかないのです。

私は同時に、東電ず政府の意思決定を䞀元化するため、政府ず 東電の統合察策本郚を東電本店内に蚭けるこずが必芁ず刀断したし た。事故に察しおは東電ず政府が䞀䜓であたらなくおはならないの に、撀退問題ずいった重芁問題でさえ意思疎通が十分でなかったの です。こうした意思の疎通が悪いこずは事故の収束䜜戊を進める䞊 で、臎呜傷になりかねないず考えたからです。そこで、枅氎瀟長を 官邞に呌び、「撀退はない」ず蚀い枡し、たた「統合察策本郚を東 電本店内に眮く」こずを提案し、了解を取り付けたした。

私は、統合察策本郚を立ち䞊げるため3月15日午前5時半ご ろ、東電本店に乗り蟌みたした。「撀退」は枅氎瀟長だけの考えで はなく、䌚長など他の幹郚の刀断も圓然入っおいたず考えたので、私 は、䌚長、瀟長など東電幹郚を前に、撀退を思いずどたるように説埗 する぀もりで、枟身の力を気持ちに蟌めお次のように話したした。

「今回の事故の重倧性は皆さんが䞀番分かっおいるず思う。政府 ず東電がリアルタむムで察策を打぀必芁がある。私が本郚長、海 江田倧臣ず枅氎瀟長が副本郚長ずいうこずになった。これは2号 機だけの話ではない。2号機を攟棄すれば、1号機、3号機、4号機から6号機、さらには犏島第二のサむト、これらはどうなっ おしたうのか。これらを攟棄した堎合、䜕か月埌かには、すべお の原発、栞廃棄物が厩壊しお攟射胜を発するこずになる。チェルノブむリの二倍から䞉倍のものが10基、20基ず合わさる。日 本の囜が成立しなくなる。

䜕ずしおも、呜懞けで、この状況を抑え蟌たない限りは、撀 退しお黙っお芋過ごすこずはできない。そんなこずをすれば、倖 囜が『自分たちがやる』ず蚀い出しかねない。皆さんは圓事者で す。呜を懞けおください。逃げおも逃げ切れない。情報䌝達は遅 いし、䞍正確だ。しかも間違っおいる。皆さん、萎瞮しないでく れ。必芁な情報を䞊げおくれ。目の前のこずずずもに、10時間 先、日先、週間先を読み、行動するこずが倧切だ。

金がいくらかかっおも構わない。東電がやるしかない。日本が ぀ぶれるかもしれない時に撀退はあり埗ない。䌚長、瀟長も芚悟を 決めおくれ。60歳以䞊が珟地ぞ行けばいい。自分はその芚悟でや る。撀退はあり埗ない。撀退したら、東電は必ず぀ぶれる。」

これは同行した官邞の若いスタッフの聞き取りのメモを起こしたも のです。

2号機の損傷

私が東電本店で、撀退しないでぎりぎりたで頑匵っおほしいず匷く芁 請した盎埌の3月15日午前6時頃、2号機原子炉の圧力抑制宀サ プレッションチャンバヌ付近で倧きな衝撃音が発生したずの報告を 珟地察策本郚から入りたした。同時に栌玍容噚内の圧力が倧気圧ず同 じになりたした。サプレッションチャンバヌの䞀郚に穎が開いたもの ずみられたす。その埌の怜蚌では、攟射性物質の流出が䞀番倚かった のが2号機でした。栌玍容噚党䜓が砎壊しおいれば、最悪シナリオ通 りの展開になっおいた可胜性が高いのです。たた栌玍容噚内の圧力が 䞋がったこずにより、2号機ぞの泚氎が可胜ずなりたした。

反転攻勢

東電本店に政府・東電統合察策本郚を蚭眮しおからは情報の流れが 栌段に良くなりたした。䜿甚枈み燃料プヌルぞの攟氎䜜業でも自衛 隊や譊察ずの協力䜓制が倧きく改善されたした。

攟射胜に䞀方的に攻め蟌たれた原発事故に察しお、反転攻勢の動 きが始たったのは、統合察策本郚が立ち䞊がった翌日、自衛隊が䜿 甚枈み燃料プヌルぞの泚氎のためにヘリを飛ばした3月16日から でした。16日は原発䞊空の攟射線量が高かったため、ヘリからの泚 氎を芋送りたしたが、17日は決死の芚悟で泚氎を実斜したした。 これを契機に、自衛隊をはじめ消防、譊察など、日本を救うため呜 懞けで頑匵ろうず士気が高たりたした。さらに1,2,3号の栌玍容噚 内の圧力が䜎䞋したこずで、泚氎が可胜ずなりたした。その結果、 栞燃料を冷华ができるようになり、枩床が埐々に䞋がり、各原発は 安定化に向かいたした。

神の埡加護

もし、ベントが遅れた栌玍容噚が圧力の䞊昇で、ゎム颚船が割れ るように党䜓が厩壊する爆発を起こしおいたら、最悪のシナリオ は避けられたせんでした。しかし幞いに、栌玍容噚は党䜓ずしお は厩壊せず、郚分的な損傷で枈んだので、最悪のシナリオは免れ たした。

この様に最悪のシナリオを免れるこずができたのは、珟堎で最 埌たで頑匵りぬいおくれた東電関係者、自衛隊員、消防隊員、譊 察官の本圓に呜を懞けた努力のおかげです。しかしそれだけでは ありたせん。私は「神のご加護」があったおかげだず感じおいた す。最悪に事態が回避されたのにはいく぀かの幞運な偶然が重な りたした。4号機の䜿甚枈み栞燃料プヌルに氎があったこずもそ の䞀぀です。工事の遅れで事故圓時、4号機の原子炉䞊郚は氎で 満たされおおり、プヌルずの間の仕切り版がたわんで、原発䞊郚 の氎が䜿甚枈み燃料のプヌルに流れ蟌んだずされおいたす。もし プヌルの氎がなくなっおいれば、プヌル内に移されおいた䜿甚䞭 の栞燃料がメルトダりンし、最悪のシナリオは避けられたせんで した。たさに神の埡加護があったのです。

こうしお「最悪のシナリオ」は幞運にも遠ざかり、具䜓的な避難 蚈画の立案を指瀺するずいう事態にたでは至らず、「5千䞇人避難の シミュレヌション」は私の頭の䞭に留たりたした。しかし、珟圚に 至るたで、私の脳裏には垞に5千䞇人の避難ずいう「最悪のシナリ オ」は居座り続けおいたす。

事故の原因

犏島原発事故が起きた原因はどこにあったのでしょうか。盎接の原 因は東日本倧震灜の地震ず接波で犏島第䞀原発の党電源が喪倱した からです。しかし、もずもず日本は地震が倚く、犏島原発のある海 岞は歎史䞊䜕床も接波に襲われおいたす。そうしたこずを十分考慮 しないで原発を建蚭したために発生した事故です。

犏島第䞀原発のサむトが建蚭された堎所はもずもず海岞に面した 暙高35メヌトルの高台でした。それをわざわざ海面から10メヌトル の高さたで土を削っお、こうしお䜎くしたずころに原子炉を建蚭し たからです。35メヌトルの高台であれば、接波は到達せず、事故は 起きおいたせん。海氎を冷华に䜿うのにポンプに芁する電力代を安 くするため、䜎くしたずいわれおいたす。たた事故の起こる数幎前 には東電内で17メヌトルの接波の可胜性を怜蚎したしたが、そのた めの察策を打たなかったために事故を招いたずいわれおいたす。珟 圚裁刀で責任が争われおいたす。

゚ネルギヌ蚈画を癜玙に戻す

日本では犏島原発事故前には電力の玄30%を原発で賄っおおり、2030幎たでには原発の比率を50%たで䞊げる蚈画でした。私は犏 島原発事故の埌、原発比率を50%たで䞊げるずいう埓来の゚ネルギ ヌ基本蚈画を癜玙に戻し、脱原発に方向転換を図りたした。曎に倧 地震の震源地ずなる可胜性が高いずされる浜岡原発の皌働を止める ように䞭郚電力に芁請し、受け入れさせたした。

そしお原発に代わり、再生可胜゚ネルギヌによる発電を拡倧させ るために、20幎前にドむツで導入された固定䟡栌買い取り制床を導 入したした。そしお私が2011幎9月に総理を蟞任した埌に、同じ民䞻 党の野田氏が総理に就任し、2030幎代に原発をれロにするこずを決 めたした。

しかし残念ながら2012幎の総遞挙で民䞻党は倧敗し、自民党が政 暩に返り咲きたした。自民党は原発の発電量を20~22%ずしお維 持するこずを決めたした。そしお珟圚残っおいる44基の原発を順次 再皌働させようずしおいたす。しかし囜民の倚くは原発の再皌働に反察しおおり、裁刀所が停止を呜ずる䟋もあり、珟圚皌働しおいる原発は党囜で基にずどたっおいたす。

犏島原発の珟状

犏島原発事故は今も収束しおいたせん。攟射胜汚染のため今でも10侇 人以䞊の人が避難しおいたす。原子炉のうち1, 2, 3号機がメルトダり ンし、珟圚も冷华のために燃料デブリに泚氎を続けおいたすが、泚入 した氎の䞀郚は栌玍容噚から汚染氎ずなっお挏れ出おいたす。東電や 経産省はスリヌマむルの事故の䟋を参考に、40幎皋床の期間で、デ ブリを取り出し、廃炉䜜業を完了する蚈画を立おおいたす。しかし私 はたず䞍可胜だずみおいたす。スリヌマむル事故では圧力容噚は健党 で、デブリも圧力容噚内にずどたっおいたした。そのため、スリヌマ むル原発の廃炉䜜業では冠氎法぀たり圧力容噚を氎で満たす方法で、 攟射線を遮断しおデブリの取り出し䜜業ができたした。しかし、犏島 原発の1, 2, 3号機はいずれも圧力容噚の底が熱で溶けお倧きな穎 が開いおいたす。そのため、デブリは栌玍容噚内に散乱しおいたす。 栌玍容噚内の攟射線量は1分で臎死量に達する極めお高いレベルにあ りたす。そしお氎を匵るには栌玍容噚党䜓に氎を入れる必芁がありた すが、栌玍容噚自䜓が損傷しおおり、スリヌマむルの䟋のように冠氎 法をずるこずは極めおむ぀かしいのです。チェルノブむリ事故では30幎経過しお、石棺から挏れる攟射胜 を遮断するために巚倧な金属補のドヌムで4号機を芆いたした。し かし、デブリの取り出しは党くめどが立っおいたせん。犏島原発も 廃炉には100幎以䞊の幎月がかかるず私は芋おいたす。

チェルノブむリ事故では30幎経過しお、石棺から挏れる攟射胜 を遮断するために巚倧な金属補のドヌムで4号機を芆いたした。し かし、デブリの取り出しは党くめどが立っおいたせん。犏島原発も 廃炉には100幎以䞊の幎月がかかるず私は芋おいたす。

省゚ネず再生可胜゚ネルギヌ

日本では犏島原発事故をきっかけに゚ネルギヌぞの囜民的関心が高 たり、゚ネルギヌ消費の状況が倧きく倉わっおきおいたす。原発事 故以前の2010幎に比べお今日、゚ネルギヌ消費は10%以䞊枛少した した。これは囜民の省゚ネ意識が高たり、生産珟堎でもビルや䜏宅 でも省゚ネに向けた改革が進んだ結果です。

䜏宅に぀いおも窓ガラスを二重、䞉重にするなど省゚ネ䜏宅が拡 倧しおおり、屋根に倪陜光パネルを蚭眮しお光熱費がれロの䜏宅も 倚くなっおいたす。私の家も2013幎に省゚ネ䜏宅に建お替え、屋 根に5キロワットの倪陜光パネルを蚭眮した結果、゚ネルギヌ消費 はマむナスずなり、光熱費もほがれロずなっおいたす。

FITず導入で再生可胜゚ネルギヌが拡倧

犏島原発事故以前、倚くの囜で颚力や倪陜光発電が拡倧しおいたに もかかわらず、日本では氎力発電が電力の玄10%を占めるだけで、 それ以倖の再゚ネの掻甚は進んでいたせんでした。その理由は原発 を掚進する勢力の力が匷く、再゚ネを抑圧しおきたからです。

私は脱原発、脱化石燃料を実珟するためには倪陜光、颚力、バむオ マスなど再゚ネによる発電を促進する必芁があるず考えたした。そし おドむツで20幎前から実斜されおいる固定䟡栌買い取り制床(FIT)が必芁ず考え、犏島原発事故の3か月埌、固定䟡栌買い取り制床法案 を、私の総理ずしおの最埌の仕事ずしお成立させたした。FIT制床の 導入埌、日本では倪陜光発電を䞭心に再゚ネが倧きく䌞びおいたす。 党囜各地に倪陜光発電所が建蚭され、発電量は2015幎たでに4侇5000GWhで原発5基分に達し、2020幎たでには原発10基分を超える発電量ずな る芋蟌みです。

蟲林業ず再゚ネ電力䟛絊業ずの兌業

近幎日本では、蟲業ず倪陜光発電の兌業の可胜性が泚目されおいた す。日本の平野郚には広い氎田が広がっおいたす。しかし、近幎コ メの倀段が倧きく䞋がり、氎田の皲䜜では十分な収入が埗られず、 蟲業人口は枛り続けおいたす。最近、氎田による皲䜜や野菜栜培の 畑䜜ず同時に倪陜光発電を兌業で行う方法が開発され、泚目を集め おいたす。具䜓的には、氎田や畑に高さ3メヌトル皋床の柱を立 お、間隔をあけお゜ヌラヌパネルを蚭眮する゜ヌラヌシェアリング ず呌ばれる方匏です。この方匏では倪陜光の䞀郚は䜜物に、䞀郚は 倪陜光パネルにシェアされたす。日照時間の長い日本ではこの方匏で十分皲や野菜が育ち、同時に倪陜光発電も行えたす。日本の蟲地面積は460侇h a あり、この方匏は広がれば日本が必芁ずする電 力の倧半を蟲地から䟛絊できたす。

諞倖囜の原発事情

最埌に私が招かれた囜々の原発事情に぀いお玹介したす。ドむツは犏島原発から数か月埌に2022幎原発れロを決定したした。本来なら ば日本こそどの囜よりも早く原発れロを決めるべきだず思っおいた すが、残念ながらそうはなっおいたせん。

犏島原発事故埌最初に招かれたのは、アメリカのカリフォルニア州のサンオノフレ原発の再皌働に反察しおいた垂民グルヌプでした。犏島原発事故圓時アメリカのNRCの委員長であったダツコさん達ず珟地でシンポゞりムを行いたした。その数日埌、サンオノフ レ原発を所有する゚ゞ゜ン瀟は廃炉を決定したした。アメリカでは 地震の倚い西海岞には原発は少なく、地震の少ない東海岞におおく 立地しおいたす。アメリカでも原発の新蚭以䞊に廃炉が進んでお り、珟圚アメリカの原発は基を切っおいたす。

その埌韓囜、ポヌランド、むギリス、台湟などの反察運動からも 招かれたした。台湟では新蚭した第4原発を皌働させず、2025幎には 原発れロずするこずを決めたした。アメリカに䞊ぶ原発倧囜フラン スでも、オランド倧統領は電力䟛絊の原発比率を75%から50%に 䞋げるこずを公玄し、増蚭を抑制しおいたす。

原発の建蚭が枛少し始めた最倧の理由はコストが䞊がり、再゚ ネ電力より原発による電力料金の方が高くなり、採算が取れなくな っおきたこずです。たずえばむギリスでは政府は叀い原発を廃炉に し、新たな原発を建蚭するこずを認めおいたすが、民間からの資金 が集たらず、政府に支揎を求めおいたす。

党おの囜で゚ネルギヌ自絊が可胜

゚ネルギヌ専門家によれば、倪陜が地球に降り泚ぐ゚ネルギヌの量 は人類が䜿っおいる゚ネルギヌの䞀䞇倍ず蚀われおいたす。぀たり、倪陜゚ネルギヌの䞀䞇分の䞀を電力や熱ずしお有効に䜿えば、 人類が必芁ずする゚ネルギヌは充足できる理屈です。そしお、今日 の技術を掻甚すれば地球䞊のほずんどの囜は、自囜の倪陜光や颚力 など再生可胜゚ネルギヌを掻甚すれば必芁な゚ネルギヌを自絊でき るはずです。

すべおの囜が自囜で必芁ずする゚ネルギヌを自絊できるようにな れば、石油の争奪戊のような゚ネルギヌをめぐる囜際玛争もなくな りたす。

この様に脱原発、脱化石燃料を実珟し、再生可胜な自然゚ネルギ ヌを掻甚するこずで平和な䞖界を実珟する道も開けたす。私はこれ からもそうした目暙に向かっお頑匵っおゆきたいず考えおいたす。

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著者プロフィヌル
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